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或る晴れた日に、友人の「魔女のすみ屋さん」を訪ねました。

 

さすがに「魔女のすみ屋さん」。ジジが見ていますね。
・・・いや、近所のネコですよ。
何とご近所の猫が他所の家の二階に居るという。
野良猫ではないが、「野良猫が生きて行ける町はやさしい。」
という藤原新也の「日本浄土」の一節を思い浮かべていると、
ほら家に帰ってゆく・・・。・・・あらほんと。
と窓枠の中を斜めに、ゆうぜんと渡って、猫は消えていきました。

池田町ワイン城近くの「魔女のすみ屋さん」を訪ねて、そんな会話をしていると、
この炭を焼く「炭焼き小屋」とは、いったいどういう処なのだろうという、
素朴な興味が湧いてきました。

すると早速「魔女のすみ屋さん」は、
20k以上離れた、山の炭焼き小屋へ案内してくれたのです。

穏やかな昼下がりの農道を外れて、
炭焼き小屋への道へ車がカーブすると、
一陣の風が吹いて、
木々の葉が弧を描くように中空に舞っています。
やはりこの人は、魔女なのかもしれない・・・。
なんだか、わくわくしながら炭焼き小屋へ到着いたしました。


小高い丘に囲まれて、そこには4棟の炭焼き小屋が連なっておりました。
いまふうの流行り言葉で云えば、
あたり一帯は、「マイナスイオン」がいっぱい!
つまりここは、『マイナスイオンの聖地』なのです。
それがどういうものか知りませんが、
足を踏み入れると確かに、炭素の充満したその空間では、
落ち着いた空気感に包まれてゆく感じなのです。
気持ちの中心がいくぶんか下がるような感じで、
妙な安定感に包まれてゆくのです。

・・・ちょうど、いい所にいらっしゃいましたね。
温和な笑顔のご主人は、窯に原木を仕込んでいる最中でした。
ぐるりと並べられた、原木はまるでアートのように見えます。

 
 

こちらは隣の、いま燃焼中の窯。

炭やきの過程で出る煙を冷却(乾留)すると、
煙で燻された液体が少しづつタンクに溜まってまいります。
この液体を精製したものが「木酢液」なのです。

副産物のこの炭の汁がタンクいっぱい1.5t溜まりますと、
道内の産地へ出荷され「木酢」となるのです。
「魔女のすみ屋さん」は、
物産店等で500mlのペットボトル1000円位で販売されている、
貴重な「木酢液」の原産地でもあったのです。

「木酢」は、昔から農業用としても、
土壌消毒・発芽促進・発酵促進・害虫忌避などに広く活用されていますが、
薬用としても活用され、また燃料以外でも、「炭」は消臭や水質浄化等多くの効用があるのです。


炭窯に原木を入れ、窯の入り口の(点火室)で燃料を燃やし窯の温度をあげると、
2日間ほどで窯の中(炭化室)は270度にもなるのです。
すると原木は自ら熱分解を始め炭化してゆきます。
空気の流入と煙突の排出ガスを制御して、
2〜3日かけてゆっくりと炭化を進行させます。
この時の煙を冷やしたものが「木酢液」となるのです。

窯の温度は、炭化終了時には800度にもなるそうです。
炭化が済みますと、泥土で密閉し。火が消えて温度が下がるのに4〜5日かかります。
その後で窯を開けて「黒炭」を出す。此処まで凡そ半月の工程がかかるのです。


その瞬間は、一度訪ねただけでは遭遇できませんので写真をコピー。


下の写真が、作業を終えたばかりの窯の内部。
まだ、温もりが残っています。
そうして、「マイナスイオン」たっぷりの炭の粉も、
最近では住宅建築の床下に活性炭として活用されています。
このように原木から出来る一割の量の「炭」の他に、
排出される粉も灰も有効利用されるのです。
 

すべての作業を終えて、
次の炭焼きを待つ窯の内部に立つと、
これもまた、炎の芸術作品を鑑賞しているような錯覚を覚える見事さなのです。



四つの炭焼き小屋が、このようなローテーションで、
連動して炭を生産するわけですが、
ブルーシートに覆われた炭焼き小屋の屋根が、
ロマンから現実に立ち返らせます。

昔は藁屋根でしたが・・・、何故ブルーシートなのか。
そうです。木酢液の発生現場である、炭焼き小屋の屋根は、
トタンでは直に錆びてボロボロになってしまいますよね。
それで、容易に張り替えられるブルーシートなのです。


だがしかし、
反対側の屋根のブルーシートの破損状態が、
その作業工程の厳しさを物語っていました。


隣接する池の畔には、消防自動車が待機しております。
・・・大きな地震で、駆けつけた時は、
既に炭焼き小屋は崩壊し出火していたそうです。

・・・そうは言っても、
「消防自動車」は動くかどうか分らない感じで、
まるで絵本の中に佇む感じです。

 

・・・・こうして、半月以上かけて、「木炭」は製品化されます。
原木の違い、やきかたの違いで、様々な「炭」が出来上がります。

「黒炭」はナラ系の原木が使われます。
「ナラ炭」は、硬質で火持ちがいい良質な炭です。
しかし、ナラ。クヌギ。カシ等の、
資源として循環する里山・雑木林は減少し続けています。

また、カシ材を高温で固く焼き締め炭素純度を上げる「白炭」。
また「備長炭」と云わる最上品も作られますが、これらは別の場所の窯で作られるのです。



父の炭焼きを継いで25年。
原木の伐採から製品化まで、すべてを熟すには・・・、知らぬ間に時がたってゆく。

「それでも、わたしたちは、ほんとうに山が好きなんです。」
と魔女のすみ屋さん夫妻は、幸せいっぱい。

じつに地道で気の長い、作業の一端を拝見させて頂いただけでも、
なんだか、こちらも幸せな気分になってゆくのが不思議でした。

・・・それは誰にも容易に真似をする事の出来ない、
貴重な作業ゆえだからなのです。


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